モチベーションを上げる3つの欲求、心理学者デシが明かした報酬と意欲の関係

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モチベーションを上げる3つの欲求、心理学者デシが明かした報酬と意欲の関係
soma252 / fdecomite

毎日仕事をこなしていると、どうしてもモチベーションが上がらない時があります。それが楽しい仕事でもモチベーションが続かない時がありますよね。このモチベーションを左右するものに「動機(づけ)」があります。その「動機(づけ)」について知ればモチベーションを自在にコントロールできるでしょう。そこで本記事では、心理学の研究に基づき、モチベーションを上げる方法綴ります。

「人が自律的に生きているかどうかの鍵となるのは、自分自身の選択で行動していると心底感じられるかどうかである。それは、自分が自由だと感じる心理状態であり、いわば行為が行為者の掌中にある状態ともいえる」

人を伸ばす力―内発と自律のすすめ/エドワード・L. デシ

報酬がモチベーションを下げる

20世紀前半は、報酬をもらうことでモチベーションを上げるというスキナー(Skinner,B.F.)らが提唱していた行動主義が全盛期でした。しかし当時、大学院生の心理学者デシは、、好奇心旺盛な幼児が小学校に上がるとそういった好奇心が急激に下るのはなぜなのか?疑問に思ったと言います。

やがて、その原因はスキナーらが提唱していた行動主義に反して、子供に上げる報酬にあるのではないかと考えました。その後、心理学実験によって実証します。スキナーらの、外発的動機づけに対し、内発的動機づけを提唱しました。

ソマパズルを使った実験

soma パズル

当時大学生の間で流行っていたソマというパズルを使って実験は行われました。大学生を2つのグループにわけ、パズルは7種類のいろんな形をしたブロックを組み合わせ、飛行機や犬など図示された形を作るという内容です。学生には5種類用意されました。なおパズルは両グループに解けるよう計画されています。これを3セクション行いました。

第1セクションでは、両グループ普通にパズル解きを行いました。第2セッションでは、1つのグループにパズルが解ける度に報酬を与えることを約束し、実際に守られました。第3セクションでは、両グループとも第1セクションと同じように実験が行われました。

  第1セクション 第2セクション 第3セクション
グループ1 報酬なし 報酬あり 報酬なし
グループ2 報酬なし 報酬なし 報酬なし

そして、どのセクションでもパズルが2問解ける度にデシは、もっともらしい口実をつけて、8分間部屋を離れワンウェイミラー越しに測定を行います。実験室には、「ニューヨーカー」などの雑誌が用意されていたり、魅力的な玩具があったりし、その8分間は自由な時間を過ごしていいと学生たちに伝えました。その間も必死にソマパズルを解くことは、意欲が高いとされました。

例えば、学生が授業を終えた放課後も勉強を続けていたら、あなたは意欲がある生徒だと思いませんか?デシもそう考えたのです。

実験結果

第1セッションから第3セッションまでの自由時間にソマパズルに取り組んでいた時間の変化を見ると報酬を与えたグループには、低下がみえましたが、もう一つのグループでは変化が見えませんでした。この結果より、与えられた課題に対し、報酬が与えられることで、意欲が下がることがわかりました。

他にも対象を変え、課題を変え実験は行われましたが、罰による脅迫(1972年) 監視(1975年) 締め切りの設定(1976年) 課題の割り当て(1978年) 目標の押しつけ(1980年) 評価の予告(1982年) 否定的フィードバック(1984年) 指示命令(1993年) 競争(1996年)に対しても意欲を下げる結果がでています。

この現象をアンダーマイニング現象、この効果のことをアンダーマイニング効果といいます。

選択の自由がモチベーションを高める

1つのグループには、どのパズルを解くか、パズルにどれだけの時間を費やすかを選択させました。もう1つのグループには、最初のグループが選んだのと同じパズルを同じ時間で解くように伝えます。結果は、単純な選択でも、その機会が与えられたグループは制限されたグループに比べ意欲は高くなりました。

意欲が高まるこの現象をエンハンシング現象、効果をエンハンシング効果といいます。

モチベーションを上げる3つの欲求

モチベーションを高める内発的動機づけには、3つの人間のもつ基本的な欲求が影響しています。

  • 有能性(competence)の欲求
  • 自律性(self-determination)の欲求
  • 関係性(relatedness)の欲求

有能性の欲求

自分はできる!という自信からステップアップしよう心。環境に自ら働きかけて、それが確認できると意欲が高まります。

自律性の欲求

自律性あるいは自己決定能力は、自分の意思で自由に選択することを指します。

関係性の欲求

誰かと結びついていたいという人間の傾向です。関係性の欲求を単独で満たしても、意欲は高まりません。また関係性の欲求は意欲が高い段階では、あまり影響はなく、高い意欲を保つために関わっているぐらいでしょう。同時に、自律性の欲求、有能性の欲求を強める必要があります。意欲が低い段階では、関係性が強く関わりがあります。

モチベーションを上げる方法

上記の実験などから、他人からやらされているコントロールされていると感じている場合はモチベーションが下がり、自分の意志で行動をとることはモチベーションが高まるとわかります。つまり、理論上は、自分で選択し、自分のスキルアップのためにつまらないことでも、みんなと一緒に頑張ればモチベーションは上がるという事ですね。